楽器店スタッフがフルートについてお話しています。
フルートの選び方、購入時の注意点。それからメーカーの比較とおすすめモデルの紹介・値段。初心者へのおすすめ製品の案内です。
フルートの構造と音色を比較
フルートは音程によりピッコロ・アルトフルート・バスフルート・コントラバスフルート…と様々な種類がありますが、今回は、「管体の材質」、フルートの購入時に検討材料になる「構造の違い」をご紹介いたします。
フルートの管体の材質の違い
フルートの起源を辿ると木製の横笛になるのですが、現代のフルートの素材は金属が主流となります(木製のフルートも現在販売されています)。
洋銀(洋白、白銅)製 | 安価なフルートの素材として、多く利用されています。管体の重量も軽く扱い易いので、演奏し易い素材です。洋銀を成す素材に「ニッケル」が含まれる為、稀に金属アレルギーが起こる場合がありますので、ご注意ください。 |
---|---|
銀製 | 19世紀のフルート改革者ベームに「最もフルートらしい」と言われた素材で、価格も楽器のレベルにより多く存在しているので、自身に合った楽器を見つけるのに一番です。ほとんどが「スターリングシルバー」と呼ばれる92.5%が銀で出来ている素材となり、洋銀製にくらべ響きのある音色で、経年による劣化も少ない為、オススメし易い素材です。 長年使用すると黒色の皮膜が出来る事もありますが、研磨剤を利用すれば取り除く事が出来ます。 |
金製 | 銀製より重量が重く吹き応えもありますが、その分しっかりと鳴らしてあげた時の音色は艶やかで「遠達性が良い」と呼ばれます。素材も14K~24Kと様々です。 |
プラチナ(白金)製 | 金製よりも重量が重いため演奏には体力、筋肉が必要ですが、その分金製よりも良い響きが鳴ると言われています。 |
木製 | グラナディラ、黒檀等の素材が用いられ、独特の柔らかな音色を持ちます。金属製とは扱いが違い、水分を持たせたまま保管すると管体が割れる可能性があります。 |
フルートの構造の違い
「インライン」と「オフセット」
Gキィと呼ばれるキィの位置が、「インライン」は他のキィと同じく縦に一直線上に並んでおり、「オフセット」は少し外側(左腕に近い側)」にずれて配置されています。
奏者の指の長さ、手の形により使用し易い方を選ぶためのもので、特に音の優劣はありません。
「カバードキィ」と「リングキィ」
「カバードキィ」は基本姿勢で指を置く5つのキィが、キィに固定されている「タンポ」と言うもので音孔(管体に空いている穴)を全て塞ぐ機構になっています。
対して「リングキィ」は上記のキィの中心部に穴が開いており、「タンポ」と指との両方を使い、音孔を塞ぐ機構です。「リングキィ」でしか出来ない替え指や特殊な運指がありますが、穴をしっかり塞がないと音が鳴らなくなるため、指の細い奏者や初心者には不向きな構造です。
「C管」と「H管」
基本的なフルートの最低音は「C(実音のド)」になりますが、一つ下の「H(実音のシ)」まで出すことの出来る楽器を「H管」、H管の楽器の足部管(一番下の管体)を「H足部管」と言います。
「H管」になると「C管」に比べ、管体が長くなる為に音程が少し暗くなる傾向にある様です。
「Eメカニズム」とは
現代に良く利用されるフルートの構造上、第3オクターブ目の「E(実音のミ)」が出しにくく、ピッチも安定しない場合が多くなっています。
これを改善するために「Eメカニズム」と呼ばれるキィシステムを追加し、上記の音を演奏し易くされています。ほとんどのフルートには備わっている構造ですが、時折安価なフルートには備わっていないこともあります。
フルートのメーカー比較と値段
ヤマハのフルート
言わずと知れた日本のメーカー、世界のヤマハ。日本人に扱いやすい操作性で、抜群の音程感を誇り、楽器の個体差も少なく初心者にオススメです。
安価な200シリーズ、頭部管のみ銀製の300シリーズ、管体も銀製の400シリーズ、上級モデルの「フィネス」、「イデアル」他、常に進化を続けています。
修理が必要となりパーツが在庫切れを起こしていても、比較的すぐに入荷する事が多いため、アフターメンテナンスも安心です。
YFL-312(カバードキィ・Eメカニズム付) 130,000円
YFL-412(カバードキィ・Eメカニズム付) 179,000円
YFL-817(カバードキィ・Eメカニズム付) 850,000円
パールのフルート
こちらも日本の会社で、パーカッション・ドラムでも有名な会社です。
大阪・東京にメーカー直営のギャラリーもあり、日本製の強みを充分に持ったメーカーです。
初心者にオススメの「Dolce」「Elegante」、総銀製の「Cantabile」と、他にも自身の力量、求める音色に沿ったモデルを選ぶことが出来ます。
国内メーカーの為、ヤマハ同様アフターメンテナンスも安心です。
PF-665E(カバードキィ・Eメカニズム付) 143,000円
F-EP958/E(カバードキィ・Eメカニズム付) 290,000円
F-CD925/E(カバードキィ・Eメカニズム付) 480,000円
ムラマツのフルート
日本で最初のフルートを制作したと言われ、世界中に愛用者が存在する老舗メーカーです。
東京・大阪・名古屋の各直営店では楽器だけでなくCDや楽譜も多数取り揃えており、フルート愛好家にはたまらない空間となっています。
代表的な「DS」を始め、プラチナメッキや金製等様々ありますが、基本モデルに様々なオプションを付け加え「自分の一本」を感じ取る事の出来るメーカーです。
フルートの選び方や購入時の注意点
初めてフルートを始める方は、Eメカニズム付きのカバードキィをオススメします。
Eメカニズムはほとんどの製品に組み込まれていると思いますが、最初からリングキィを使用してしまうと、力が余計に入ってしまったり、指のせいで音が鳴らなくなってします事もあります。
購入時には「頭部管・管体の素材」「カバードキィかリングキィか」を注意して下さい。
各メーカー、品番により「頭部管のみ銀製」「リッププレート(唇の当たる部分)、ライザー(リッププレートと頭部間そのものを繋いでいる部分)のみ銀製」等、予算や求める音色により近づける様に工夫を凝らした品番を多数販売されていますので、間違えることの無い様気を付けて下さい。
キィの構造については、上手な人はこぞってリングキィを使用している、と決まっているわけではありません。カバードキィの方が指の位置に捕らわれずスムーズに演奏出来ると言う利点もありますので、よく検討です。
リングキィの穴を塞いでカバードキィの様にしてしまう小物も販売されていますので、初心者の方でリングキィの楽器を購入される場合、こちらも併せて購入する事をオススメ致します。
初心者におすすめしたいフルート製品
ヤマハ YFL-312 130,000円
パール PF-665E 143,000円
フルートは国産メーカーの割合が非常に高く、どちらのメーカーを取っても安心です。
初心者の方には「フルートらしい音色」かつ「高すぎない」事が大切かと思いますので、頭部管が銀製、Eメカニズム付きの製品をおすすめ致します。
演奏技術があがり、物足りなくなってきましたら、総銀製やプロフェッショナルモデル等、上級ラインを是非お試し下さい。
豊かな響きを肌で感じて頂けるはずです。